『逆説の古典』は2025年2月28日に朝日新聞出版より発行された大澤真幸氏(社会学者)の新書です。副題に「着想を転換する思想哲学50選」とあります。

著者が朝日新聞の読書面で、2017年4月から2022年3月まで「古典百名山」という連載の一部を担当されて、国内外の古典を毎回、1冊ずつ取り上げて紹介し、批評されたものを新書にするにあたり加筆されて、2倍から2倍半の内容になっているようです。

50冊のうち半分近くは高校生でも知っている題名の本だと思います。但し、その題名と概要は知っていても、どの本も全編を読んだ経験のある方は少ないかもしれません。

あとがきに「なぜ古典を読むのか?」の解説がありますので、以下に一部引用します。

  「・・・古典を読むのは、『物知り』になるためではない。新しいことを考えるためである。少なくとも私の場合、思考を通じて創造する上で、つまり新しいことを見出す上で、古典の読書が常に、決定的な意味をもってきた。難問にぶつかって、前に進めなくなったとき、お気に入りの古典を見返すと打開策に思い至るのだ。・・・いったい何が起きているのか、私たちはどこに向かっているのかを知りたい、そんなとき、古典の読書経験が利いてくる。かつて読んで気になっていた箇所、おもしろいと感じたことが、天啓のように降りてきて、理解のための鍵を与えてくれるのだ。・・・」(P237、P238)

私はこの本を読んで、『意識と本質』(井筒俊彦)、『社会契約論』(ジャン=ジャック・ルソー)、『プラグマティズム』(ウィリアム・ジェイムズ)の文庫本3冊を買いました。特に『社会契約論』の批評に興味が湧きました。

他にも読みたい本がたくさんあるのですが、文庫本がないものは、興味が持続するかどうかで購入を決めたいと思っています。  

『逆説の古典』はいつも傍において、時折読み返したい1冊になりました。莫大な情報を消化できずに日々追われている時代には、貴重な本だと思います。